〇橙での過ごし方、まだまだ勉強中です!~まるさき福祉会の奮闘記~
講師:土井真路氏(まるさき福祉会副理事長)
1年前にPWSの2名の入所打診があり、スタッフ一同、PWSという障碍がどのようなものか知らないまま、ほかに受け入れ先がないのなら、と快く受け入れたそうです。そこでの奮闘を紹介されました。
自閉症対応に自信のある、まるさき福祉会ですので、スタッフや関係各所とライン交換や話し合いを重ね、PWSの方々の支援をしているそうです。いくつか紹介しますと、PWSの方とラインや日記を交換して300通にもおよぶやり取りをすることがあるそうです。PWSの方の言葉かけにも注意を払い、否定はしない、PWSの方がおこした症状について勉強会を開いたり、ケアギバーズネットワークの相談テーブルを活用しながら理解を深め支援しておられました。どんな状況にも熱い思いをもって取り組まれ、若いスタッフとともに相模原の障害福祉ネットワークを築きながら奮闘されている様子をおうかがいすることができました。
〇PWSの基礎知識
講師:南史郎先生(サンマルコクリニック院長)
まずPWSがどのような遺伝疾患であるのか、PWSになる染色体のお話があり、また検査方法について紹介がありました。
成長に伴いどのように成長していくのか体や運動機能、食欲などについて、時期によってケアしなければいけない内容に違いがあり、20歳ごろが一番大変だそうです。
食欲については満腹中枢、摂食中枢が視床下部にあり、そこに何らかの異常があるのではないかと想定されているそうです。体重管理に失敗すると心不全になりやすいため、とても怖いことだと話されていました。また低酸素や二酸化炭素についての反応が悪く、二酸化炭素をチェックする機能が弱く筋力が弱いので呼吸能力が弱くなるため、夜眠れない方が多いそうです。この場合は治療が必要になります。
成長ホルモンの使用方法について、使い過ぎないよう専門家と相談しながら接種する必要があるそうです。性ホルモンの作用は重要で精神を安定させるため補充についても慎重に行う必要があります。また、GLP‐製剤というものがあり、美容業界では使用され糖尿病でない人が使うので、困っている人に届かないことがあるそうです。これはPWSの方には効かない薬で効果はないと断言されておられました。薬名は、ビクトーザ、リベルサスといです。
PWSにとって怖い病気は、糖尿病で気をつけて暮らす必要があります。また歯周病にならないような歯のケアもとても大切だそうです。内臓脂肪が多い方は糖尿病になりやすいそうでPWSの方の脂肪は皮下脂肪なので糖尿病になりにくいのではないかと話されていました。ただし、体質によってはすぐに糖尿病になってしまう方もいます。
PWSの特性は個々に大きく違いがありますが、半分くらいの方々は、耳で言われた言葉より目で見た言葉のほうが理解しやすいそうです。ですからジグソーパズルは得意ですぐに完成させることができます。抽象的な言葉はわかりにくく先への見通しが立てにくいのではっきりとした言葉がけをするような工夫が必要です。相手からどのように思われているかは全く気にしないので人間関係が築きにくく、叱られても直すというようなことはないので叱らずにすむような対応をしたほうが効果的だそうです。また、一緒に計画をたてると守ってくれるため、一緒にやることが大事で押し付けはダメだと力説されていました。うまくいかないと被害者意識を持ちやすくストレスを感じやすく一部の否定が全否定されたと受け止めてしまう傾向にあるということにも注意が必要です。疑心暗鬼になりやすいのにも関わらずけなげに生きておられることを知ってほしい、と気持ちに寄り添う診療をされておられます。大事なことはPWSの方々は人から認められたいという気持ちがあり、共感してほしい、わかってほしい、という気持ちを持っているということを知ったうえで、支援者側の判断基準でみないよう共感できるように意識して接することが一番大事で怒ったり叱ったりすることはなんのメリットもないと断言されていました。
先生のPWSの方々への思いというのは彼らに尊敬をもちながら付き合われておられることに支援者として大変心強く感じ、改めて自分の支援を見直す良い時間となりました。
〇運営より
オンライン:25名 会場9名 の参加があり、関係各所の専門家やスタッフの皆様がお越しくださいました。質疑応答も活発に行われ、時間が足りないくらいでした。特に今回は会場が相模原ということもあり、地元スタッフの参加が多くあり、近年にはめずらしいほどたくさんの方々にお集りいただきました。これからも支援者同士、横のつながりを大切にしていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。ご興味のある方は是非当ネットワークに入会していただきPWS支援のあり方や工夫、支援者あるあるなどを共有しつつ明日の支援に元気が持てるよう力を合わせていきたいと思っておりますので今後ともご支援ご指導のほどよろしくお願いいたします。このたびは、ご参加まことにありがとうございました。
運営委員 岡本佳鼓